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山形蔵王(スペシャルオリンピックス山形大会)

      君はスペシャルオリンピックスを知っているか
 雪だるま 2008年レポート(8) 東北-1
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スペシャルオリンピックス
大会のロゴ
 スペシャルオリンピックス(SO)とは、知的発達障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織を指す。目的は障害者の健康や体力増進の他、多くの人との交流を通じて社会性を育むこと、社会参加や自立への意識を高め成長していくことなど、様々だ。
 実は私の勤務先の会社が、スペシャルオリンピックス冬季大会が山形蔵王で開催されるから、ボランティア参加する人はおらんかと募集をかけてきたのだ。私は身体障害者(主に脳性マヒなど、知的障害もある)の子供たちにスキーを教えるボランティアをやっているし(清里レポみて)、参加を表明していた。
 この大会は受入日の金曜日を入れると金-日の3日間に及ぶが、とりあえず土曜日の1日だけ参加して、月曜日に有給を入れて3連休にし、山形に行くときには立ち寄りたかった湯殿山や羽黒山、ジュネス栗駒も回ってみよう。日曜日はボランティアの人数も増えるらしいので、1日の参加だけにすることにした。
 当初はアルペンまたは通訳のボランティアをするエントリーだった。ところが直前になって海外の選手は来なくなったので、通訳はいらないという。あれ?日本人だけ?そんなオリンピックってあるの?そうしたら、スペシャルオリンピックスは通常のオリンピックや身体障害者を対象としたパラリンピックと違い、4年に1回の国際大会ではなく、常に色々やっていて、その冬季大会という意味らしい。調べたら、「オリンピックス」という複数形をとる理由は、大会に限らず、日常的なスポーツトレーニングから世界大会まで、様々な活動が年間を通じて、世界中でおこなわれていることを意味しているということらしい。
 そんなことも知らなかったが、とりあえず参加してみるか。いつもボランティアをやっている子供たちも参加させてもいいかもしれないし、ボランティア仲間にも教えてあげよう。ということで、3月8日(土)に参加することにした。

地図 東北
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
夜明け前に蔵王温泉に到着
 
 ここでもうちょっと大会について話そう。 競技は
・アルペン、スノボ(竜山ゲレンデ)
・クロスカントリー、スノーシューイング(唐松コース)
・スピードスケート、フィギュアスケート(ウェルサンピア山形屋内スケート場)
・フロアホッケー(山形市総合スポーツセンター体育館)
の7競技で、選手は896名、競技役員273名、ボランティアは約2500名という構成だ。ボランティアがやたら多いが、案内誘導はもちろん、記録集計、用具、ポーター、医療から宿泊補助(宿舎内でサポート)など17項目もあるから大変だ。
ボランティアだから報酬や交通費は出ないが、昼食の弁当と、ユニクロ提供のボランティアジャケットが支給される。また、山形県庁など数ヶ所から送迎バスが出ているので車で行く必要もない。
 ただし、アルペンの集合は山の上の蔵王温泉にある体育館に朝7時だ。送迎バスは山形駅に6時20分発だから、当日、東京を早朝に出ても間に合わない。だから山形市内のホテル、あるいはいっそのこと蔵王温泉に前日に入って前泊するのが普通だ。
トコロガナント、金曜日は午後半休でもとって早く出ようかと思ったのだが、部下の1人が転職こいて、年度末にバタバタになり、やっぱり金曜日は休めなくなった。そのため、金曜日の深夜に出て集合場所で仮眠し、受付をすることにした。まあこうなると予想していたから、3日のスキー旅行にしたのだが。
 
蔵王温泉 地図
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
竜山ゲレンデを見上げる。
コース設定はやさしい
山形 スペシャルオリンピックス
ボランティアのオレンジのジャケット。
デラがけは手ぶらなのでストックは無い
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
テレビの取材だ
 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
旗門を通過する
 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
ゴール付近奥に誘導係が並んでいるのが見える
 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
いけいけ〜!。みんなで声援を送る
 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
スタート前の選手と会話するボランティアも重要だ
 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス
スタート前に「サン、ニ、イチ」と指で合図し、いいスタートを
切れるようにするスタートボランティア
 
 0時30分に自宅を出て0時50分には浦和ICへ。2:15那須塩原SAで10分休憩、2:50に安宅SAで20分休憩、4:15に村田JCTを通過し、4:40に蔵王SA着、15分休憩してから5:25に集合場所の蔵王体育館に到着。走行距離は399kmだった。途中のSAでは5分くらいずつちょこちょこ寝た。うっかり寝すぎないようにそのたびに目覚ましをセットするから大変だが、これだけでもだいぶ違う。それでも駐車場の周囲は薄暗く、体育館も閉まっているので集合時刻まで寝ることにした。
 そして6時半ごろ受付。山の上の方はガスっていたが、空は明るく、キリリと冷えた朝の空気が凛とした雰囲気を作っていた。受付ではIDカードと昼食券をもらい、ボランティア用のオレンジ色のジャケットを受け取り、板を担いで竜山ゲレンデへ向かった。結構な距離だ。リフトに乗って竜山の最高地点へ。するとそこに黒いジャケットのスタッフがいた。黒いジャケットはボランティア・リーダーで、細かい進行を把握しているので、当日来たボランティアはリーダーの指示を受けるだけでいいようになっている。「あ〜、それじゃあまずはデラがけお願いします」はあ?デラガケ?何それ?。「すみません、それって山形弁でしょうか?」とか思わず言いそうになってしまった。スキー歴10年以上、1級所持の管理人でさえ、レースをやっていないと初めて聞くことになるスキー用語であった。フランス語のデラパージュ(横滑り)のことらしい。「デラがけ」と言った場合は、レースコースなどで掘れてしまったコースなどを整備するために横滑りで雪面をならすことを意味する。横滑りは2級を目指していたころの1級の種目だったのでやったことはあるが(私が1級受検のときは規制滑降になってしまったが)、かなり本格的だ。しかしコース係になったボランティアは15人くらいいるが、みんなうまいなあ。誰も転ばない。そしてポールを立ててコースを作る。「レースが始まったら、5〜6人滑るごとにコースをデラがけしてください」つまり、滑ったところをトレースしながらならしていくということだ。結構なスピードで斜めに横滑り、方向転換をしないで後ろ向きにデラがけし、ターンのところで重心を移動し、前向きにデラがけ、次のターンで後ろに重心を移動して後ろ向きのまま後ろを見ながらデラがけ・・・。これをストックを持たずにやるのだ。1級の横滑りよりもずっと高度だ。なんとかできたが、難しいと思う人はボーゲンでもいいらしい。しかしそこは1級の意地だ。それにたいていの人が横滑りを平気な顔してやっている。ほとんどが1級以上のようだ。
 9時には開会の挨拶があり、NPO法人スペシャルオリンピックス日本名誉会長の細川佳代子さん(細川護熙元首相の夫人)がセレモニーとして一本目を滑ることになる。ん〜、結構速いんじゃないの。周囲のボランティア仲間は年齢の割りに速いとか言っているけど、私は負けそうだ。次に大会スポンサー企業のひとつ、ウィルコムの喜久川社長が滑る。は、速い!。年間30回はスキーに行っているというが、ちゃんとしたレースの訓練を受けたことがあるような滑りだ。ゴールラインには大勢の客(というか、子供たちの家族かな?)が集まっていて、待機している私の方までちょっと緊張だ。
 レースが始まった。選手が次々に滑り出す。いちおうタイムは計っているが、スピードは問題ではない。とにかく滑ることだ(この大会では参加者全員が入賞以上となり、表彰される)。コース脇からは声援が飛ぶ。みんなに応援されて滑走し終わった時の達成感は子供たちの日常にはあまり無いものだろうから、この大会がいかに意義深いものか理解できるだろう。私が毎年ボランティアに参加している子供たちにも出場させたいなあ。すると「シミズさん、お願いします」と声がかかった。う、もう出番か。板の先を谷に対して左に向けたまま、旗にひっかからないように、掘れたミゾが埋まるようにゴールに向かって往復する。や、やばい、よく考えたら注目度満点だ。転倒するわけにはいかん!。しかも4回転したくらいで次の選手をスタートさせている。もし追いつかれたらコースを譲らないといけないので、上にも注意しないといけない。でも何とか最後の旗門を終えてコース脇の関係者用ゲートからゲレンデを離れた。何人かの人が拍手してくれたのが、ほっとしてうれしくなった。次があるので急いでリフトに乗る。
 ボランティアはコース係だけではない。選手をスタート地点まで誘導したり、スタート前の選手に話しかけて緊張をほぐしたり、また旗門を正しく回れるようにしたり、ゴールした選手をケアしたりと、多岐に渡っている。確かに通常の大会よりも人手が必要になるだろう。
 ここで注意してほしいのだが、知的障害のある子供たちのためにできることがあると言って、日本じゅうから大勢の人が集まって大会を運営している事実も重要だ。ただスポンサーから資金を集めて、入場料を支払った観客が見ている、という最近のオリンピックとは違う。この大会を支えようと無報酬のボランティアが自らの意思で協力して成り立っていることや、観客は自分の家族や地域とか全く関係の無い選手にでも一生懸命声援を送って、ゲレンデ全体が一体になっていることにも意義があると思う。
 レースはゲレンデの距離をすべて使うロングと、下半分だけを使うショートがある。ロングの方が年齢もやや高く、装備も本格的だ。テレビ局の取材も来ている。いい感じだ。
 昼になったので、様子を見ながら交代で昼食だ。広場に自衛隊のテントがあり、選手やボランティアはそこで弁当とトン汁をいただく。戻ってみると、ショートの設定になっていた。デラがけは短くなるが、選手の人数はこちらの方が多いようだ。ここでもコース整備を行う。そして最後にスノボのコース設定を行い、試合が終わったら撤収だ。あっという間の初日であったが、実に充実した時間だった。大会後もIDカードがあればリフトに乗って滑っていいよとのことだったが、夜行運転で疲れていたので温泉に入って山形市内のホテルに入り、食事をしてすぐに寝た。今度あった時は会社の若手も大勢連れてこないとなあ。そしてこのサイトの読者にもスペシャルオリンピックスを少しでも知ってもらえて、自分もボランティアでもやろうかという気になる人がでてくるとうれしく思う。
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山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
6時半、地蔵岳の方角はモヤっていた 集合場所は受付のある体育館だ
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
受付会場。オレンジのジャケットが
ボランティアの目印だ
IDカードと食事券
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
自衛隊関係の人が大活躍 カワイイ名前の駐車場だが、
やることはおっかない
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
竜山のコースを上から。急に地蔵岳方面に暗雲が スタート地点だ
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
取材が来ていたぞ さっそうと滑る
(顔が分かる写真はUPできないので) 
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
ラストだ!いけぇ! 右のかっこいいお兄さんが、コース係のリーダー。
本業は理髪店だそうです。お世話になりました!
山形蔵王 スペシャルオリンピックス 山形蔵王 スペシャルオリンピックス
昼食はこの中で・・・ 弁当に、玉コンニャクがあるのには涙しました。
山形 スペシャルオリンピックス 山形 スペシャルオリンピックス
スタートの体勢は・・・と はい、サ〜ン、ニィ〜、イチ〜、GO!!
山形 スペシャルオリンピックス 山形 スペシャルオリンピックス
リラックスしていこうな! ボードもあったぞ
山形 スペシャルオリンピックス 山形 スペシャルオリンピックス
大会終了後の静けさ。
遠く尾根の右側に横倉のカベが見える
下からコースを見上げる
山形オリンピック 山形蔵王 
長野オリンピックの時、日本からは山形も立候補
していたのだ。体育館の中で
ここに入りました。いい感じです
山形 スペシャルオリンピックス
からしをたっぷり塗って・・・。
おばさんも玉コン食べてるから、ツヤツヤじゃないか!
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【ギャラリー】
山形スペシャルオリンピックス
アルペンのゴール付近。観客も大会の一部だ
山形 スペシャルオリンピックス
午後、地蔵岳方面はガスってきたが、レースの視界は良好だった。
ショートのスタート地点は低く、選手も多い。ロングのスタート地点から撮影
 
スキー
山形 ラーメン 山形に来るとよく行く郷土料理屋があるのだが、すぐ寝たかったのでさっとラーメン屋に入った。でもなかなかおいしく、東京に無い味だった。山形ではチェーン店らしい。
「ごま蔵 駅前店」で、写真はごま味噌ラーメン780円だ。
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ごま蔵駅前店
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