強豪の競合に対抗するには | |||||||||||||
2007年レポート(7) 山形-3 | |||||||||||||
今日、私が行くつもりだったのは蔵王ライザワールドの1ヶ所だけだった。ここは、もしも山形蔵王に行ったときに突然ガスったりして樹氷群が見えなかったりしたら、樹氷を見るのは別の日にここからにしようと考えていた。なぜかというと、ここから見る地蔵山の樹氷は角度が良く、望遠レンズによる写真が樹氷の宣伝によく使われるというからだ。しかしまあ、初日の山形蔵王に満足していたし、むしろ今日の方が雲が多くて良くないみたいなので、サッと見て回って、あとは斉藤茂吉記念館や天童、山寺の観光でもして帰るか。そういうつもりで山形市のホテルから13号線を南下し、エコーラインを登っていった。 ちょっと余談だが、私は昔は自転車が好きで、富士山にも登ったことがあるのはエッセイにあるとおりだ。中学2年の夏には上野から山形上山まで夜行電車で行き、自転車を組み立て、エコーラインを登って刈田岳で御釜を見て、すみかわや蔵王えぼしの脇をすり抜けて福島のユースホステルに泊まったことがある(翌日、スカイラインを登って裏磐梯に行った)。当時は早朝、駅で水をもらおうとしたら駅員のおじさんの山形弁が聞き取れずに逃げ出し、途中の道路でも散歩中の老婆に道を聞いたら、ガソリンスタンドという英語しか分からなかったものだ。当時の私には、山形は米国よりも遠い存在だった。エコーラインはくねくねしていて苦しかった記憶がある。当時は缶コーヒーが珍しくて、コカコーラがジョージアというコーヒーを自動販売機で売っているのを初めて見たのもここだ。刈田岳のレストハウスで壁にかかったメニューに「中華そば」という安いのがあったので、何かと思って注文したらただのラーメンが出てきて驚いた・・・。 思い出の多いエコーラインを登り、蔵王猿倉スキー場の脇を抜けてライザワールドに到着だ。 |
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蔵王ライザワールド スキー場コースガイド(Webパンフ)を加工 蔵王ライザワールドスキー場公式サイト |
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8時ごろ到着。駐車場はかなり空いていたのはいいが地蔵山はすっぽりガスに覆われていた。やはり初日に山形蔵王は正解だったか。まあ、ここは1回券を5枚くらいで一通り見ればいいだろう。さっそく板を履いてリフトに乗った。山岳スキー客も多いみたいだが、御釜の方まで登るのかな?。そのすぐ裏はみやぎ蔵王すみかわスキー場だ。 一番上のリフトに乗ると、いきなり樹氷群となる。ただし、リフトの右側は白く、左側を見ると青々としている。北と南の方角がモロに分かるものだ。融けかかった樹氷は山形蔵王と比べるとちょっと汚く見えるが、それがびっしり並んでいるとどこか風情が感じられるのが不思議だ。 左右の雪の付き具合そのものが面白いリフトを登って最高地点へ。そこはもやっとした樹氷群が広がっていた。初日の山形蔵王の場合、地蔵山はハイクアップで、ザンゲ坂のコースは樹氷の中に造成されたコースを滑るものだが、ここは本当に樹氷の中を縫うように滑るものだ。おお、いいではないか。しかし標高の高い樹氷群のあるエリアはガスが強く、本来なら広がっているはずの樹氷原が見えないのは残念だが、それはゼイタクというものだろう。 かもしかコースはポールを張ってトレーニングが行われていたが、パノラマコースは、下の景色はガスっていないのでいい感じだ。ここを滑ったあと、再び同じ最高地点に戻る。2本目はクロスカントリーツアーコースに入る。ここは夏はエコーラインという有料道路がある場所で、今から四半世紀くらい前に自転車でヒイコラ言いながら登った場所だ。そこを冬に滑ることになるとは!。スキーで滑るには簡単なダラダラ斜面だが、自転車で登るにはとんでもないつづら折で、いったいあといくつ角を曲がれば峠ナンジャイと思ってペダルをこいだ記憶がよみがえってきた。 春の雪のスキーでは本当にこがないといけなくなるほどの緩斜面もある。滑るのにかなり疲れた。アルペンの板の人やボーダーにはあまりオススメはできないコースだ。 最下部もひととおり滑り、まあだいたい分かったし、樹氷は初日に堪能しているから、いいだろう。10時過ぎにスキー場を出た。 |
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ところで今日は蔵王ライザだけにして、あとは観光をして東京に帰るはずだった。ところがここに来る途中、私の心を捉えて離さなかったスキー場があった。それは蔵王猿倉スキー場だ。私は本来、数多くのスキー場にいくことを目的にしているのではないので(そうだとしたら、たくさんまとまってある新潟のロコスキー場を制覇するだろう)、全国スキー場ガイドに乗っていない規模のスキー場ならばそれなりに特色がないと行かないことにしている。だから猿倉がそこにあるのは分かっていたが、素通りの予定だった。ところが、ライザに行く途中、猿倉の入り口の看板に「3月4日(日)お客様感謝デー」とあった。おや、今日じゃないか。これを見ると元広告代理店のマーケターであったこともあり、どんなことをやるのか、せっかくだからと行かずにはいられなくなるのだ。もう、これは蔵王権現のお導きとしか考えられない、行かなければバチが当たるだろう。それはあってはならないことだ。というわけで、帰りがけの駄賃に寄ることにした。こんなに直前に行くことを決めたスキー場は初めてだ。 |
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蔵王猿倉スキー場 コースガイド(Webパンフ)を転載 蔵王猿倉スキー場 公式サイト |
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さて、みたところファミリーゲレンデだ。子供が多い。それでも右側のリフトに乗ってみると、閉鎖されているチャンピオンコースの斜度はなかなかのものだ。さて、最高地点からのコースは・・・まずまずではないか。小さなポールを並べたレースコースもある。子供が練習するのにはちょうどいいのではないだろうか。子供の練習に徹するならば、観光的意味合いのある山形蔵王よりもこちらの方がすいていて、リフトも安くていいのではないか。確かに、地元の人が多いみたいだ。 1回券3枚、あっという間に滑り終わったが、予想していたよりも広くていい感じだ。 さて、楽しみの感謝デーは・・・甘酒、トン汁、玉こんにゃくのふるまいであった。いいねえ!。車を運転するので甘酒は飲まなかったが、玉こんにゃくとトン汁は良かった。特に東京ではあまり目にしない玉こんにゃくがこういった場で普通に出されるのだから、さすがは玉こんにゃく消費量日本一の山形といえる。だから山形県民は女性はスリムな人が多く、男性は尿道結石が少ないと言われている・・・かもしれない。山形といえば米沢牛、さくらんぼ、ラフランスなどの名産があるが、そこまでいくのはゼイタクというものだ。しかし新潟のシャルマン火打の感謝デーは100円取ったとはいえ、カニ汁やもちセットを出したのにならって、100円で山形名物、具沢山の芋煮を出してもいいのではないだろうか。いろいろ言っちゃったけど、玉こんにゃく、おいしかったです!。 ちなみにこのスキー場、スノボは禁止で、ファミリーゲレンデは他の中上級コースから流れ込んでこないので(つまり、コースにいるのは全員初心者)、事故が少ないことがウリになっている。この安心、安全を全面に出して地域密着でがんばっているようだ。 時々、近い位置に複数のスキー場が固まっているのを見たことがあるだろう。立山山麓には小ぶりで同じくらいの大きさのスキー場「極楽坂・らいちょうバレー・あわすの」の3つが並んでいる。白馬の「鹿島槍・青木湖・さのさか」は独自性を保ちながら、3つ連絡している。白馬の「栂池・八方尾根・岩岳」は同じ白馬の名を冠した東急系という看板でありながら、ゴンドラを持つ大規模スキー場として独立して並んでいる。それに比べて、「山形蔵王」のすぐそばには「蔵王ライザワールド」「蔵王猿倉」という同じ蔵王の名を冠するスキー場があるのだが、こちらは三兄弟というよりも、「親−子−孫」くらいの規模の違いがあるし、一体感は全く無い。その中にあって、特色を出しながらよくがんばっているではないか。負けるな、猿倉!!。200 SNOW REPORTSがついている!。 11時過ぎには猿倉を出発した。 |
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天童といえば将棋の駒の生産地で有名だが、私には祖母の生まれ故郷という響きがある。祖母は小学生の時に親の北海道の開拓に付いていったが、生まれは最上川に近い蔵増(くらぞう)だから、私には山形県民の血がクオーターだけ入っていることになる。で、その祖母から聞いた話で、家から山に向かってずっと登っていくと縁結びで知られる若松観音という通称「若松さま」がある。花笠音頭の「♪めでためでたの若松さまよ」でも有名な寺だ。そこにはムカサリ絵馬といって、婚礼を描いた絵が絵馬として奉納されているという。ムカサリとは、村山地方(山形市あたり)の方言で、「婚礼」のことだ。 なぜこんなのがあるのか、お分かりだろうか。結婚したいから祈願しているのではない。若くして(特に適齢期で)子供が独身のまま亡くなってしまった場合、冥界で一人では寂しいだろうから、結婚して伴侶をみつけてくれ、と親など親族が奉納するものだ。本坊には最近奉納されたものがあり、撮影禁止だが、絵馬堂には昭和初期以前のものが展示されている。年代的には江戸時代からあるのだが、特に太平洋戦争の時期に増加して、中には1枚の絵に20代前半の兄弟2組の婚礼が描かれていて、両者とも脇に「パプアニューギニア方面」とか書かれているものもある。奉納する時の親の気持ちを思うと胸を打つものがあるが、これも冥界にいるであろう子供のために絵馬を奉納せずにはいられない、という山形県人の心の優しさではないかと思う。ここは子供のころからいつか行ってみたいところでもあった。2時ごろ寺を後にした。 初日に駅だけ利用した山寺駅には20分ほどで到着。例の食堂「おのや」に駐車して、立石寺(通称:山寺)へ。山の上にある寺だが、リフトなどあるわけがない。ふもとから1時間近くいろいろな施設を見ながらえっちら登って、見学した。面白山への道路が冬期は閉鎖になるから、雪だらけかと心配していたが、ほとんど積雪は無かった。ちょっと観光化が進んでいる懸念もあったが、断崖にせり出した舞台から山寺の町を見下ろすと、ほっとした気分になる。夏はすごい混雑するというが、冬に時間があったら来てみるのもいいだろう。4時には見学を終え、「おのや」で芋煮定食を食べて、16時33分には東京に向けて出発、17:31に国見、19:57に佐野で休憩して、20:35に浦和を通過、21時ちょうどに池袋の自宅に着いた。3日間で1112kmのドライブだった。今回の遠征はベストに近い樹氷が見ることができて満足だったが、とても「山形感」のある遠征でもあった。みなさんもぜひ、山形に行って感じてみて欲しい。冬は、山形だ。 |
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蔵王に至る鳥居。宮城県側にもあったなあ (蔵王すみかわのレポート見て) |
夏用と冬用のマップだ | ||||||||||||
冬山登山も人気だ | 「オシズ」は人の名前かな? 由来を聞きたくなるような名前だ |
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立派なイスだ | 雲が垂れ込め、町の方だけが明るく見える | ||||||||||||
雑然とした感じもある | まさか迷うことはないだろうが | ||||||||||||
方角によっては真っ黒に見える | エコーラインのコース。平坦な部分は大変だ | ||||||||||||
ちょっと振り返ると、道路標識が 首まで埋まっていた |
なかなかのコースだ | ||||||||||||
スクールは立派な 3階建ての木造だ |
青い鳥コースだ |
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ベースは立派なんだよなあ | 【ここから猿倉】 今日はお客様感謝デーだ |
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「駐車禁止」というものの言い方 をしないのがいい |
パソコンで印刷した手作り、という感じだ |
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ファミリーゲレンデをリフトから | ファミリーゲレンデの様子 | ||||||||||||
猿のポーズから練習だ | 右のコース、滑りたいなあ | ||||||||||||
レース用のポールがチョコチョコ出ていた | それ、始まったぞ! | ||||||||||||
玉コンだ! | 玉コン4兄弟、ごちそうさまでした!! | ||||||||||||
こちらはトン汁。100円とってもいいから、 具を増やそう |
ガスボンベを足元に | ||||||||||||
ゲレ食です | センターハウスだ | ||||||||||||
山寺の急な石段。 雪はほとんどない |
舞台から山寺の町並み | ||||||||||||
【ギャラリー】 | |||||||||||||
【蔵王ライザ】 樹氷原の中を滑るならライザだ。真っ白だったら、もっと迫力があっただろう | |||||||||||||
【蔵王ライザ】 レースコースを上部から。遠くにクワッド小屋、その向こうにセンターハウスが見える 山形が最上川(もがみがわ)に削られた盆地であることが分かる。最上川は山形県だけを流れる川だ。 |
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【猿倉】 子供向けのレースコースとしては良さそうだ。何より、 暴走する客がいないので、安全であることがいい。 |
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またまた来ました、「おのや」。 写真は芋煮定食。もともと山形は大鍋で3万食の芋煮を作る芋煮会をやることでも有名なくらい、芋煮は郷土の名物料理でもある。山形に行ったら、ぜひどこかで食べてみよう。 |
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蔵王ライザスノーワールド スキー場 (公式HP) 蔵王猿倉 スキー場 (公式HP) 山形市観光協会 斉藤茂吉記念館 (上山市観光協会) 若松観音 ムカサリ絵馬 山寺 (山形市観光協会) 玉こんにゃく (山形県庁) 芋煮 (山形市観光協会) |
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