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中央アルプス千畳敷

    ミニ・シャモニー!
雪だるま 2002年レポート(4)
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テレカ 中央アルプス千畳敷  
テレカ  
テレカ 中央アルプス千畳敷  
テレカ  
中央アルプス千畳敷  
ロープウェイ駅(しらび平)
山にはガスが・・・
中央アルプス千畳敷
ロープウェイ内部。
スキー客もちらほら
中央アルプス千畳敷
このロープウェイに乗って
中央アルプス千畳敷
駅からロープウェイ。
遠くには雲海と南アルプスが
中央アルプス千畳敷
上の写真の景色を300mm望遠で。
富士山の頭が見えた
中央アルプス千畳敷
中央アルプスを間近に見る
中央アルプス千畳敷
ホテル千畳敷。
天文台がある
中央アルプス千畳敷
おい、ガスが出てきたぞ
中央アルプス千畳敷
カールの底、下に
Tバーリフトの乗車口が
中央アルプス千畳敷
中央が宝剣山だ
中央アルプス千畳敷
ガスがのぼってくる
中央アルプス千畳敷
あっという間に何も
見えなくなった
ローメン
これがローメンだが、
ただのやきそば
中央アルプス千畳敷
晴れてくれた
中央アルプス千畳敷
私が乗ると言ったら、
係員は整備してくれた
中央アルプス千畳敷
乗車口からコースを見上げる
中央アルプス千畳敷
コースの上から見下ろす
中央アルプス千畳敷
ホテルを見下ろす
中央アルプス千畳敷
このコースをどこ滑ってもいい
 そもそも、あなたは「中央アルプス千畳敷」というスキー場を知っているだろうか。知っているならばあなたはスキーにはちょっとうるさい人だろう。
 簡単に紹介すると、中央アルプス(長野県の地図見た時、真中のやや下あたりにある山脈)にあるスキー場だ。
 ただし、以下の点で他のスキー場と性格が全く異なっている。
・営業するのは4月中旬から5月下旬までしかない(よって、春スキーをやらない人には縁が無い)
・ロープウェイで標高2600mまで登ったところにある、やや広い地形(カールという)の場所で滑る(つまり、氷河地形の中を滑ることができる)
・経済性、地形および自然保護の観点からチェアリフトが無い(つまりTバーしかない)
・スキーは山岳スキーをやる人が多い。
・その場に来るのは観光客の方が圧倒的に多い
などだ。
なお、日本で最も高い場所でスキーをするなら富士山の山頂から滑降すればよい(えらい危険らしい)。しかし人を搬送する器具(つまりリフト)が設置されているスキー場としてはここが最高所である。なにしろ、日本には標高が2000mを超えるスキー場は数えるほどしかなく、志賀横手山の2305mが世間の常識では最高所になっている。2600mを超える場所に設置されたTバーは別格扱いといえるだろう。
 さて、私は東京の人間が行きそうなスキー場に行き尽くしたというのに、このような独特の個性があるスキー場を知らないのは問題がある。しかもGWの休みが仕事でつぶれ、その代休が平日に取れたとあっては、もう行くしかないだろう。あまり躊躇もせず、天気予報とにらめっこしながら、5月9日に行くことにした。
 当然の読みではあるが、Tバーリフト1本では「滑る楽しみ」など赤城同様、無いものと思ったがいい。やはりスキーをしない観光客で賑わうくらいだから、展望のよい晴天時に行くことが絶対条件だ。前日の8日は雨で、千畳敷ホテルに電話で聞いたらずっと霧がかかっていたという。9日は晴れの予報なのではずれないことを祈りつつ決行する。
 ロープウェイの始発は8時なので、5時半ごろ家を出る。雨の中を中央高速をひたすら西へ。朝6時での駒ヶ根の予報は晴れだが、濃霧注意報が出ている。いやな予感だ。石和あたりの温泉に入って帰っちゃおうか。そこでホテルに電話したら「晴れてます、富士山が見えます」というので、安心して走る。岡谷JCTを名古屋方面へ。伊那の先、駒ヶ根ICで降りる。曇り空だ。山が見えないのが心配だ。ここから数分で菅谷バスセンターに到着。隣接の駐車場に車をとめる。
 実は、自家用車はここまでしか入ることができない。自然保護の観点か、道路の複線化の予算が無いのか知らないが、車を制限するなんてスイスのツェルマットみたいだ。
 ところが、この駐車場は平日だというのに、生意気にも400円も料金をとりやがる。しかもここからロープウェイ駅までのバスは往復1600円だ。おまけにスキー板の持込は100円で、もちろん往復ビンタの200円である。あれやこれやと金をむしり取りやがるが、ここまで来て引き返すこともできない。天気が悪かったらどうしてくれよう。スキー板やボードを担いだ男女グループがいるが、他20人くらいは皆、高齢者の観光客だ。
 20分くらい待って、ようやくバスに乗る。ここからロープウェイの駅まで40分の山道(すごい狭い道路)をくねくね登る。そしてやっと駅に到着。ロープウェイの料金は往復2200円だが、インターネットで事前にアクセスするとクーポンがもらえて1割引になる。むしょうにありがたくなる。
 20分くらい待って、ロープウェイに乗る。すぐに雲の中に入り、視界が全く無くなった。ゲッ、どうなるんだ、やばいぞ。しばらくすると突然、後ろの方でバアさんたちの茶色い歓声があがる。雲の上に出たところで、遠くの雲海の上に富士山が見えたのだ。客が一斉に後ろに寄り、ロープウェイが傾く。コラ、おれを道連れにするな。
 ロープウェイ駅で降りるとそこは、完全に雲の上だ。すばらしい。すぐにテラスに出てカメラをセットし、雲海の上に浮かんだ南アルプス(私が今いるのは中央アルプスに属する)の山々と遠くの富士山を撮影した。
 ロープウェイ駅と千畳敷ホテルは合体している。ホテルの前面に出るとそこにはゴツゴツの岩山があった。ええと、この向こうにゲレンデがあるのかな。よく見たらその手前に雪の斜面が広がっていた。おお、これがそのバーンか!200mの短いTバーが1本あるだけだ。近くにいた従業員によると、目の前のゴツゴツした山が宝剣山だという。なんかガイドブックよりずいぶん近くに見える。「5分くらいで登れるんじゃないですか」「とんでもない、早くても1時間はかかります」そういえばマッターホルンを足元から見上げた時も山頂がすごく近くに見えたものだ。
 写真を数枚撮影する。同じバスだった男女グループは靴にアイゼンを装着し、ピッケルを持って極楽平へ登り始めた。Tバーで飽き足らない人は山岳コースもあるが、8本爪のアイゼンとピッケルが無いとだめだという。そうだろう。
 ゲレンデには4〜5人のボーダーが見える。よし、私も数本滑ってあがろうか。ところがいきなりガスが出始める。そしてあっという間に視界が無くなった。そして待てど暮らせど視界が消えないのだ。放送で「ゲレンデにいるボーダーの人は注意してください、とんでもないところを滑ると帰れなくなります」とか放送している。やばい。それにガスの中を滑っても仕方ない。
 時刻はいつの間にか11時になっていた。ううん、もっと早く来るんだった。後のロープウェイで来た観光客はみんなブーブー言っていた。彼らが見たのはガスだけだ。高い金払ってこれじゃあね。私は食堂で早い昼食にする。
 昼食はローメンという、ここいらの名物らしいやきそばを食べる。りんごの酸っぱさが入っているらしいが、どうも普通のやきそばにしか思えない。ホテルの出口でいっしょになった豊橋から来たというスキーヤーは朝イチからいて、それまでずっと晴天の中、富士山を見ながら滑っていたという。そしてもう帰るとか。それが正解だ。
 12時ごろ、やっと晴れてきた。よおし、いいぞ!。さっそくスキーブーツに足を通そうとした。するとTバーの係員らしき人がホテルに入ってきて、「お客さん、これから滑るの?ちょっと1時まで待ってて。メシ食いますんで。」おいおい、昼メシだからリフトを止めますなんてスキー場、聞いたことないぞ!!
 でも、ここは標高2600m、下界の常識など通用しないのだ。仕方なく土産屋でアルプスの本を読んだりして時間を潰した。
 さて、やっとTバーが動く!。コースなどすぐ飽きる。3本滑ってやめよう。1回200円だから600円を先ほどの係員に払う。すると「3回ですね。ハイ」で終わりだ。あれ?チケットは?「私が覚えてますんで」そうだよなあ、ボーダーの連中はTバーを使わずに離れた斜面でジャンプ台を勝手に作って遊んでる。スキーヤーはみんなアイゼンを装着してのハイクアップだ。このTバーは今日は私のためだけにあるようなものだ。ううむ。
 さらに係員は、「まず私がボードで上までのぼってコースをならしてくるので待っててください」と言い、Tバーでのぼり、さらにそのリフトコースをズリズリしながら降りてきた。Tバーに乗りやすくしてくれたのだろう。
 乗るのは決して楽ではないTバーだが、とにかくズルズルと登る。ホテル裏の広場からは大勢の観光客(ジイさん、バアさん)の視線が私に集中する。コラ、私は見世物ではない。バーンの長さはザウスの半分も無いだろう。繰り返すが、景色が悪かったら、何の意味もないスキー場だ。
 思いっきり漕ぎ出し、パラレルターンで4回転で終わり。2級の検定バーンにもならないが、よしとしよう。腐った雪だが思ったよりは固い。係員によると、今シーズンは雪が多かったがオープン前から気温が上がりだし、融けるのが早いという。それでも5月の最終日曜まで営業したいというから、これは尊敬ものだ。
 Tバーに乗っていて気づいたこと。それはここがまるで日本とは思えない・・・・・そう、フランスのシャモニのような場所だということだ。あのバレブランシュの氷河スキーを何百分の1のスケールで再現したようだ。森林限界を超えて木が全く無く、氷河の典型であるギザギザの山肌、ううむ、ここはシャモニか。
 日本に氷河があった証拠は北海道や東北の山にもあるそうだが、やはり日本アルプスの山々にその特徴がよく出ている。もともと「日本アルプス」という名称自体、明治時代に来日したイギリス人宣教師のウェストンが命名して世界に紹介したのだから、シャモニに似ていて当然である。シャモニに行ったのはもう2年も昔だが、とても懐かしく感じられて、Tバーに乗っているあいだはずっと宝剣山に見とれてしまった。日本にいることを瞬間的ではあるが、忘れさせてくれるスキー場だ。来てよかった。
帰りはそば屋に寄り、あれこれ名所めぐりをして東京に帰る。
 それにしても、日本にもあんな氷河スキーができる場所があったのか。ぜひ、あなたにもお勧めしたい。ただし、天気がいい日だけだ。
orangeline
中央アルプス千畳敷 中央アルプス千畳敷
ロープウェイは満員だ 神社もあるぞ
中央アルプス千畳敷 中央アルプス千畳敷
アイゼンを付けて・・・ ものものしい装備だ
中央アルプス千畳敷 中央アルプス千畳敷
おい、ガスってきたぞ 気をつけてな!
中央アルプス千畳敷 中央アルプス千畳敷
ボーダーがジャンプ台作っていた 晴れ間が・・・
中央アルプス千畳敷
光前寺そば。
あまりそばの味がしない
中央アルプス千畳敷
この写真だけ見ると、バレブランシュのようだ!
手前の色が変わっているところがTバーのコース
 
 
スキー TIP
こまくさの湯帰りはバスセンター近くの「こまくさの湯」に寄った。500円。露天風呂があってよろしい。他に「こぶしの湯」があるが、隔週木曜日は休館だった。
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